HR SUMMIT 2012シンガポール大会から見た

アジアの先進企業/公共機関で沸騰する人材マネジメントの最新動向

HR SUMMIT 2012 シンガポール大会の報告は、こちらからダウンロードできます。

シンガポールでは、数多くのHR関連コンファレンスが開かれています
 約4000名が参加するアジア最大のHR関連コンファレンスHR SUMMIT 2012シンガポールが、5月9−10日にシンガポールマリーナベイサンズで開催された。
 このコンファレンスの参加費用は、2日のパッケージ価格が、約1700シンガポールドル(割引無しでGreatest Hitsに参加する場合)もするにも関わらず、アジア地域を始め、世界からも多くの人事関係者が参加している。
 確かに、プログラム内容、テーマの設定も欧米の人材マネジメント年次総会にも匹敵する内容にしようと苦労をしている点が伺える。高い参加費を払っているため、2日間の日程のすべてに参加する人が多い。
 日経BPが主催するの人財キャピタルジャパン等では、参加無料が多いので、宣伝色が多少あっても仕方ないと思われがちだが、この大会では、真剣に学ぼうとする企業の人事総務担当/リーダー/マネジャーに焦点をしぼり、人材マネジメントに役に立つ内容をアジアの事例で実施しており、その内容、質ともに高い印象を与えている。
 日本の場合は、参加費無料のコースに参加者が殺到するが、興味のあるセッションだけに参加する傾向が強い。例え、無料の1セッションだけの参加でも、参加数に含まれ、同じ人が、複数のセッションに参加すると、参加者数が増えるのである。従い、欧米やシンガポールのHRM関連の大会との参加者の総数と単純に比較するのは余り意味がない。
 その発表者を見ると、欧米先進企業のシンガポール法人が殆どであり、本社の方針に基づき最新のマネジメント手法の導入事例を紹介している。

欧米の人材マネジメント手法をベースにキチンと導入しているアジア諸国
 HR SUMMIT 2012 シンガポールでは、主催者側の挨拶は一切ない。シンガポール在住の司会者が歯切れよく、スピーカーを紹介しており、欧米のHRM関連団体で取り上げられたHRM関連のホットテーマを中心に進められる。
 日経BP社と同様に、HRM Asiaと言う雑誌を発行しているキー・メディア社(Key Media)が主催しており、テーマやスピーカーの吟味をキチンと行っている。
 主なスピーカーは、シンガポール人が一番多いが、その次は、欧米からのスピーカーも多い。近隣のインドからのスピーカ―も多い。日本企業からは、Fujixerox,、三菱ふそうトラック・バスからの人もいるが、日本人ではなく、現地の人が発表を行っている。中国のHuaweiからタレントマネジメントの導入事例もあったが、もとIBMにいた米国人だ。
 この中で一番驚きなのが、シンガポール政府の労働省交通局の若いリーダーが発表しているのが印象的だ。女性CEOやマネジャーも結構多い。
 参加者には、会議終了後に、発表者の全資料をpdfでダウンロードが出来る様になる。
 このサービスがあるから、今回はるばる日本から参加しても良いかと判断した。

シンガポール政府は、人財マネジメント戦略を国是として推進!
 今回のHR SUMMIT 2012 シンガポールで一番印象的なのが、シンガポール政府としてHuman Capital Managementを、国の発展にとって、最重要課題であるとの基本方針のもとに国の成長戦略を打ち立てている点だ。日本と同様に少子高齢化人口減少が予想されるが、この対策をシンガポール政府は、真剣かつ計画的に実施している。
 シンガポール政府の基本方針のもと、どの程度、政府が中小企業を支援する必要があるのかを検討し、それを各施策に反映している点は素晴らしい。実に、模範的事例とも言える。既に、多くの支援機関を設置し、支援活動を開始している。
 また、シンガポール大学の他、INSEAD、シカゴ大学等の欧米大学、更には、コンサルタント会社とも提携して、リーダーシップ開発も進めている。

シンガポール交通局LTAは、職員中心のマネジメントスタイルが浸透!
 シンガポールには、世界でも最先端の交通システムがある。日本と同様の地下鉄、鉄道網
の整備も進んでおり、日本より進んだ自動運行システムが導入され、定時運転が実施されて
いる、非常に珍しいシステムと言える。
 運転手、車掌もいないことから、運航経費も安上がりで、日本と比べるとはるかに安い利
用料金を実現している。
 それを実現できたのも、利用者の意見を反映できる若手中心の活力あるチームがLTA内
部や運営機関の中でも活躍しているからで、彼らが今後の担い手として、期待されている。


シンガポール政府は、中小企業対策にもタレントマネジメント手法を活用!
 シンガポールでは、大学・ビジネススクールでの人材マネジメント関連の教育体系も、欧米大学の支援を得て、進んでおり、外資系のシンガポール法人の殆どの企業では、タレントマネジメントの導入が進んでいる。
 欧米やアジアでのでの金融危機の事例の体験や、人口減少の傾向や、タレントミスマッチの現状も反映して、タレント・マネジメントには、大変熱心である。
 今回のHR SUMMIT 2012 シンガポールでも、タレント・マネジメントの必要性を情熱的に話す人が何人かいて、その熱心さが印象的だ。

中国のグローバル企業Huaweiの海外支社では、タレントマネジメントを導入
 大変興味深いセッションの一つが、中国の通信サービス会社Huaweiのグローバル法人において、タレントマネジメントを試しに導入した事例だ。
   今回の発表者は、IBMで人事を長年やっていた方で、Huaweiにも欧米並みのタレントマネジメントの導入を依頼され、インドロシア法人において、導入した事例発表である。
 Huaweiの中国本社は、昔からトップダウンが強く、重要な情報はトップだけが見て、必要な人だけに回すタイプの古い体質があり、職場の仲間で育てると言う風土がないのが普通である。
 現在の経営者が変わらないかぎり、中国本社でのこの古いマネジメント手法は、すぐには変わりそうにないが、「Huaweiのグローバル法人では、グローバルな手法に合わせて、意識改革を進めることが出来た」と言う興味ある事例なのである。
 中国でも、欧米有名大学の卒業生が、10万人を超えたとの話もあり、グローバルなマネジメント手法はどんな方法なのかの理解も進んでいる。
 中国内では、従来のトップダウンのマネジメント手法は、当分変わりそうにないのが現状だが、まずは、「グローバル法人から着手し、ステップバイステップで意識改革を進める必要が有る」と言う事例が必要になろう。
 しかし、よく考えてみると、日本政府の公的機関オーナーが経営する伝統的な日本企業でも同様のトップダウンのマネジメント傾向が強いのが実体である。従い、「タレント・マネジメントのような意識改革を必要とするマネジメント手法の導入では、グローバル組織から手始めに、ステップbyステップで進めていくのが一番現実的だ」と言うことを教えてくれた良い事例と言える。

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