人材指標(HR メトリクス), 人材分析(HR アナリティクス)とは?

人材、人財、タレントは、どう使い分けるのです?

 人材マネジメントの世界では、人によって、会社によって、人材(Human  Resource)と言ったり、人財(Human Capital)と言ったり、更には、タレント(Talent)と言うことがあります。皆さんは、どう使いわけてますか?
 伝統的には、従来の呼び方である人材(Human Resource)がよく使われています。グーグル検索等をする場合には、人材(Human Resource)を使った方が、多くの検索が掲示されますが、記事の内容が古いものが多く見られます。
 一方、人財(Human Capital)を使う人は、「貴重な人財をどう活かせるか」という気持ちで、使いますので、そのような事例は、まだ多くはありませんが、比較的新しい情報が得られます。
 また、欧米の人材マネジメントでは、「色々な潜在能力がありそうな期待される人財」のことをタレントと呼ぶことが多いので、日本語でも、その趣旨を含めて、タレントと呼ぶことが増えています。「芸能人」として育てることを意味しているのではありません。
 タレント獲得(Talent Aquisition)は、外部からの採用だけでなく、「社内から潜在能力がある人財」を、獲得することを含みますので、この言葉を使うケースが増えています。タレント開発(Talent Development)は、現在の職場では活かされてない潜在能力を探し出し、それを活かせる職場環境を探しだすことであり、必ずしも現在の職場がやるべき仕事だとも決めつけられません。
 更には、最近、聞く機会が増えているタレント分析(Talent Analytics)は、まだ使われてない潜在能力を持った人財から、その能力を活かせる職場の創造、新規の挑戦を支援する態勢づくりのために行っており、HRプロ(戦略的ビジネス・パートナーSBPを目指す人財マネジメントのプロ)の存在が、重要になります。
 このタレント分析を支援するための基礎データの入手/分析のために、人材・人財予測分析(HR アナリティクス)が注目されています。
 欧米諸国では、タレント分析用に見える化情報サービスを行うベンダーも、いくつかあります。

人材指標(HR メトリクス)、人材分析(HR アナリティクス)とは

 人材・人財指標(HR メトリクス)とは、人事戦略の価値や効果性を示す指標のこと。
 一人当たり雇用経費Cost per Hire退職率から、人財投資効果ROIなど、約600種類以上あると言われます。人事戦略の中でも何を重視するかで、これを示す指標は違って当然であり、何を目指しているのか、何に価値を見出しているのかを明確にすることから始める必要があります。
 HRプロを目指す人は、職場の意向を念頭に入れ、このHR メトリクスが何かを示すことで、企業が価値を認めているもの、目指しているものを示し、そのスムースな達成を促すことが求められています。
 従来のHR メトリクスは、内部のメンバーの過去の勤務データが中心でしたが、人材・人財分析(HR アナリティクス)では、自社の社員だけでなく、広い分野から、必要な条件にある人を選択して、アンケート等で調査を行い、それを分析した結果で、将来を予測分析することが求められます。
 内部の人材・人財指標さえ見ていれば、それで十分とは言えないことから、戦略的な目標を達成するために、必要なデータを広い分野から入手し、分析する必要性があります。
 今後は通常業務で入手可能な指標だけなく、戦略的目標を達成するための情報を集め、人材・人財分析(HR アナリティクス)を実現することが求められています。

分析力の優れた企業は、良い業績が期待できるか?

 皆さんは、物事の判断をする場合、「分析力」と「直感」のどちらを重視しますか?
 過去に色々の経験をもった人であれば、長年の経験による直感で判断することもできましょうが、信用力がない人にとっては、難しいでしょう。
 情報化の進んだ現代では、インターネットやビックデータの活用で、従来より簡単にデータの集計や分析が可能になり、それを専門にするアナリストやデータ・サイエンティストが増えてきました。
 また、小売の現場でも、店舗で買うより、インターネット購入の方が、低価格で買える様になり、ビックデータの活用で、市場の動きをより的確に把握できる様になりました。広い範囲からのデータ収集や各種の分析手法を活用することで、業績に良い影響を得ている企業が増えています。
 2006年頃、371社に実施した調査では、分析力が優れた企業は、分析力のレベルの低い企業と比べ、良い業績を示していることが報告されました。
 これは、正しく、市場分析を熱心に行い、それを今後の方針に反映させている企業努力を組織的に実施しているからでもあります。
 バブソン大学教授のトーマス・ダベンポートの「分析力を武器にする会社」の著書の中で、第5ステージと判定された11社の中のアマゾン、グーグル、ヤフーという分析熱心な企業は、顧客の反応をビックデータとして活躍し、その動向により、レコメンデーションすることで、業績を高めていった会社でもあります。

人材・人財予測分析(HR アナリティクス)の5フェーズとは?

 SHRM2013コンファレンスでは、HR アナリティクスの事例発表がいくつか見られました。
 その中の「Moving fromHR MetricstoHR Analytics」で提唱されているHR アナリティクスの5フェーズを紹介しましょう。
 この事例でもわかる通り、HR アナリティクス では、既存の勤務データを引き出してくると言う発想ではなく、戦略的な目標を設定することから、始まります。これが、方針決定です。
 例えば、離職率が高いので、これをどの程度まで、改善するかの方針を立てます。これがフェーズ1の段階です。
 そこで、離職した理由を深堀して、調査します。特に注目すべき部署、その背景に注目します。
 例えば、「同じ職場の人が忙しく面倒見てられない」のであれば、職場で後輩を育てる職場風土がどれだけ会社全体に根ざしているのかを把握するための調査を行います。
 例えば、「メンターを決めて、メンタリング・プログラムを開始する」と言う方策を決め、実行に移します。ここまでが、フェーズ2です。
 このメンタリング・プログラムの実施後、どのような効果があったか、どのようなKPIを見える化するかを決め、改善効果を把握し、更なる改善を促します。ここがフェーズ3と言えます。
 更に、この風土を職場に定着させるには、どうしたらよいのか、会社全体に広げるには、どうしたら良いのかを考え、会社全体の協力を促します。この時点で、一定の効果があった事例を示せないと、他の職場やトップからの理解も得られないということになります。これがフェーズ4の時期になります。
 ここで頓挫すれば、業績への影響を見ることなく、もとの状態に戻ってしまうこともあります。
 ここを上手く乗り越えられれば、会社全体の業績改善につなげられ、フェーズ5の領域に到達です。
 多くの会社では、メンターに対する研修をすれば、メンターがキチンとメンティの指導をしてくれるものと思い込んでませんか?
 現実は、そのような単純なものでは決してありません。
 HRアナリティクスの考え方では、単発的な業務として、人財育成を考えるのではなく、戦略的目標が達成できたのか、業績に結びついたのかを、念頭にいれて、進めることが必須になります。
 メンタリング・プログラムの進め方に関しては、こちら
 HR Metrics 及び HR Analyticsの詳細を学びたい方は、こちらのコースをご利用ください。

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